火花が話題になった時「芸人の書く小説なんて…」と思ったものです。
冷やかし程度の気持ちで手に取ったら、意外とちゃんとした小説だったことに驚いたのをよく覚えています。
火花は主人公がお笑い芸人という職業でしたが、今回の【劇場】は主人公が売れない劇団員。
コミュ障なところも持ち合わせているんだけど、彼女と出会った時の積極的なアプローチが気持ち悪いくらい前のめりで笑ってしまいました。
この主人公、とても難しい。
攻撃的だけど大人しい、なんとも扱いにくい男です。
火花もどこかもの悲しい雰囲気が漂っていたけど、この劇場もそんな感じでした。
常に何かに悩み、雲が晴れない。
芥川リスペクトの又吉らしい文章なんだろうな。
気持ちが離れていっている彼女を、ストーカーみたいに追いかけて探し回るシーンがあるんですが
そこまでするなら大切にしてあげなよ、結婚してあげなよ…って思うのは自分が女だからでしょうか。
ラストはとても胸にくる、切ない終わりだったと思いました。
又吉の書く恋愛小説は難しいけど切なくて良かったです。
火花より読みやすい!